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決議 5.10 * 「主として商業目的」の定義

* 決定14.19および第58回常設委員会で採択された決定に従い事務局により改正、さらに第15回締約国会議で改正。

条約第3条3(c)項および5(c)項に基づき、附属書 I に掲げられた種の標本の輸入許可書または海からの持ち込みのための証明書は、輸入国(あるいは持ち込まれる国)の管理当局が、標本が主として商業目的に利用されるものではないと認めることを含む一定の条件を満たした場合にのみ発行されることに鑑み、

「主として商業目的」、および第7条4項の「商業目的」、あるいは第7条6項の「非商業目的」の用語について条約が明確な定義を下していないために、「主として商業目的」(および上記の他の用語)が締約国によって異なって解釈される可能性があることを認識し、

締約国によって法律および法慣例が異なるために、単に「目的」の用語についても合意を得ることが困難となること、また利用の目的が主として商業目的か否かはそれぞれの輸入に関する事実によって判断されることを認め、

「商業的」などの用語が明確な定義を欠いており、またそれぞれの取引に関する事実が重要とされることから、輸入される附属書Ⅰの種の標本の利用目的を締約国が評価するに際して指針とすべき一般原則および事例に関する合意を形成することが必要であることを認識し、

条約第2条1項が附属書Ⅰの種の標本の取引を特に厳しく規制し、その取引は例外的な場合に限って認めることを基本原則としていることから、「主として商業目的」の解釈についての合意が重要であることを認め、

条約締約国会議は、

締約国に対して、条約第3条3(c)項および5(c)項については、以下の一般原則およびこの決議に添付する付記の事例を参照し、附属書 I の種の標本の輸入が主として商業目的に該当するか否かを判断するよう勧告する。

一般原則

1. 附属書Ⅰの種の取引は特に厳しく規制され、例外的な場合に限り認められる。

2. (金銭または別の形で)経済的利益を得ること、および転売、交換、サービスの提供および他の形態での経済的利用または利益を目的とした活動は一般に「商業的」とみなされる。

3. 輸入国は、「商業目的」という用語をできるだけ広く定義し、必ずしも「非商業的」ではない取引はすべて「商業的」とみなすべきである。この原則を「主として商業目的」の用語に適用するにあたっては、利用の非商業的側面が明確に顕著なものでない限り、すべて主として商業目的とみなし、附属書 I の標本の輸入は認めないことで合意する。附属書 I の種の標本の利用目的が明確に非商業的であるとの立証責任は、当該標本を輸入しようとする個人または企業、団体が負うものとする。

4. 条約第3条3(c)項および5(c)項は、輸入国における附属書 I の標本の利用目的に関するものであり、輸出国の標本所有者と輸入国の荷受人との間の商取引の性質に関するものではない。附属書 I の標本が輸出国から輸入国へ渡るまでの移転の段階においては商取引が伴うと考えられるが、これらは必ずしもそのまま標本が「主として商業目的」の利用されることを意味するものではない。■

付記 事例

以下の事例は、それぞれの状況の事実関係に応じて非商業的側面が顕著な取引の部類とそうでない部類とを分類したものである。各事例に続く議論は実際のケースバイケースでの商業性の判断のための指針および基準を示している。ただし、このリストは、主として商業目的ではない附属書Ⅰの標本の輸入にあたる場合をすべて網羅的に示すものではない。

a) 純粋な個人的利用:条約第7条3項は、「個人の手回品または家財である標本」について特別の規定を設けている。この例外は、附属書 I の種の標本がその所有者が通常居住する国以外において取得され、通常居住する国へ輸入された場合には適用されない。しかしこの規定から演繹して、純粋な個人的利用のために輸入された標本は主として商業目的とは見なされない。

b) 学術目的:条約第7条6項は、「科学者または科学施設の間で商業目的以外の目的の下に貸与され、贈与されまたは交換される場合」という表現を用いている。すなわち条約は、科学的目的については条約の一般的手順を特別に免除することを認めている。科学的目的が顕著であり、輸入を行う者が輸入国の管理当局に登録されたまたは他の方法で管理当局に認められた科学者あるいは科学施設であり、また標本の転売、商業的交換または経済的利益を上げるためにそれらを展示することが主な利用目的ではない場合、附属書 I の種の標本の輸入が認められる。

c) 教育および研修:輸入国の管理当局によって認められた政府機関または非営利団体が自然保護、教育、研修を目的として附属書 I の種の標本を輸入することができる。例えば、ワシントン条約の効果的な規制のために税関係官の研修を目的として標本を輸入することは認められる。このような種類の輸入は許可されてよいものとみなされる。

d) バイオメディカル産業:バイオメディカル産業に関連する附属書 I の種の標本の輸入については、商業的であるとの前提に立って厳密な審査が行われる必要がある。このような輸入には二重の目的がある。ひとつは人々の健康を増進するための製品を開発することであり、もうひとつは、その製品を販売して利益を得ることである。ほとんどの場合、後者の目的が顕著であるとみなされる。結果的にこの種類の輸入は概して認められない。しかし輸入者が輸入国の管理当局に対し、製品の販売は健康増進の研究に付随するものであり、経済的利益が主要な目的ではないことを明確に示した場合は、このような輸入は上記b) の部類に属するものといえる。

e) 飼育繁殖事業

飼育繁殖を目的とした附属書 I の種の標本の輸入については特殊な問題である。決議10.16(改正)が定めるとおり、飼育繁殖を目的とする標本の輸入は、決議10.16(改正)に従うべきでありかつ、当該種の長期的保護を第一の目的としなければならない。一部では、飼育繁殖事業のコストを補うため余剰標本の販売が行われている。このような状況においては、いかなる利潤も個人または株主のための利益とならない場合、つまりすべての利潤が附属書Ⅰの種の標本のための飼育繁殖事業の継続支援を目的とする場合に限り輸入が認められ得る。したがって、このような場合には輸入を不当と見るべきではない。商業目的を有する飼育繁殖事業のための飼育繁殖標本の輸入について第7条4項および5項は、第3条3項(c)に定める「主として商業目的」の条件に対処する必要性を排除している。飼育繁殖事業にあたっては、輸入は、種の回復を目的とし、その種の原産国である締約国の協力の下で進められる事業の一環として行われねばならないとの原則に留意すべきである。結果として生ずる利益は、附属書 I の種の回復を目的とする事業の継続のために利用すべきである。

f) 専門業者を介しての輸入:上記の事例b)からe)までについては、輸入が専門業者を介して行われた場合に問題が生じる。このような輸入は、当初に商業目的をもつものであるから、条約第3条3(c)項に基づき原則として禁止される。業者が、輸入標本を最終的には未特定の動物園または科学施設に対して販売するといった意向を申し立てた場合にもこの結論は変えてはならない。実際に、生きた標本の商業的輸入の多くは、このような意図で行われている。しかし、資格を有する科学施設、教育施設、動物園または他の非営利団体による専門業者を介しての輸入は、最終の利用目的が上記の事例b)、c)、e)のいずれかに該当し、専門業者と購入施設との間で、附属書 I の特定の標本の輸入および販売についての請負契約(許可書の発行を条件とする契約を含む)がすでに交わされており、その契約が輸入許可申請書とともに輸入国の管理当局に提出された場合には、認められ得る。事例d)についても、販売が健康増進の目的に付随するもので経済的利益が主な目的ではない場合には、同様の条件で認められる。

附属書 I の種の標本の輸入が、上記の事例のいずれかに該当する場合であっても、輸入が認められるためには条約によって適用される他のすべての関連規定を満たさねばならない。例えば、輸入の主な目的が科学的研究または動物園での展示であっても、さらに関連規定である条約第3条3項および5項に基づいて適用される諸要件を満たす必要がある。したがって、科学的目的または動物園での展示を目的とする場合でも、輸入によってその種の存続が脅かされると認められる場合、あるいは生きた標本については、標本を受領しようとする者が標本を収容し適切に世話するためのしかるべき設備の整った施設を有しない場合には、当該標本の輸入が不適当とされることもあり得る。

さらに第2条1項の規定に基づき、野生から採られた附属書Ⅰの標本を上記のいずれかの目的で輸入する際には、原則として、まず輸入者は次の事実を明示しなければならない。

a) その種と同種の飼育下で繁殖させた適当な標本を入手できなかったこと。

b) 附属書 I に掲げられていない他の種では意図する目的に利用できないこと。

c) 他の代替手段では意図する目的が達せられないこと。■

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